身近な労働法の解説 ―違約金制度の禁止―

2024年12月25日
身近な労働法の解説 ―違約金制度の禁止―

労基法16条では、違約金制度や損害賠償額予定の制度を禁止しています。
今回は、違約金制度の禁止について解説します。

目次

1.賠償予定の禁止(16条)

労基法16条では、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めています。

2.違約金制度の禁止とは

「違約金」とは、債務不履行の場合に債務者が債権者に支払うべきものとあらかじめ定められた金銭であって、契約当事者間で契約に附随して定めるものです。労働契約の当事者(労働者と使用者)間において、労働契約期間の途中退職など、労働契約に基づく労働義務を労働者が履行しない場合に、債務者(労働者本人もしくは親権者または身元保証人)の義務として課せられるものです。

労働契約に附随して定める違約金制度とは、労働義務不履行があれば、それによる損害発生の有無にかかわらず、使用者は約定の違約金を取り立てることができる旨を定めたものです。
一般法である民法では、契約自由の原則に基づき違約金を定めることを認めていますが、労働関係においては労働者の足止め策に利用され、身分的拘束を伴うこととなりますので、これを民法の特別法として禁止しています。

3.違約金を定める契約

禁止される違約金契約は、労働義務不履行による実損の有無にかかわらず一定の金銭を支払う旨を定めているものです。
例としては、「3年以内に退職した場合は、会社に対し50万円を支払うこと」、「無断欠勤した場合は罰金3万円」、「遅刻した場合は罰金1万円」などがあり、就業規則に定める減給処分(制裁)や労働不足分の控除(ノーワークノーペイ)とは別のものです。

違約金を定める契約の締結当事者としての使用者の相手方は、労働者に限定されていません。契約の相手方が労働者自身の場合はもちろん、労働者の親権者または身元保証人が、労働者の行為について違約金の支払い義務を負担する場合の契約も含まれます。さらに、労働者が負担義務を負った違約金の支払いについて保証する保証人または連帯債務者の保証契約も含まれるものと解されています。

4.本条違反

本条に違反して、使用者が労働契約の不履行について違約金を定める契約をした場合には、使用者は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(労基法119条1号)。本条違反は、違約金を定める契約をしたときに違反が成立します。違約金の取り立てや現実に徴収したときに違反が成立するものではありません。

また、本条違反の違約金を定める契約は無効となります。労働者以外の親権者または身元保証人が身元保証契約において本条違反の契約を定めた場合も、無効となると解されています。このような契約があったとしても、使用者は違約金を請求することはできません。

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