労契法8条は、労働者と使用者の合意により労働条件を変更することができる旨を規定しています。
今回は、労働契約の内容の変更について解説します。
1.労契法8条
「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と規定しています。
当事者の合意により契約が変更されることは、契約の一般原則です。この原則は、労働契約についても当てはまるものであって、本条は、この労働契約の変更についての基本原則である「合意の原則」を確認したものです。
2.条文の解説
- 本条は、「労働者及び使用者」が「合意」するという要件を満たした場合に、「労働契約の内容である労働条件」が「変更」されるという法的効果が生じることを規定したものです。
- 合意により」と規定されているとおり、労働契約の内容である労働条件は、労働契約の締結当事者である労働者および使用者の合意のみにより変更されるものです。したがって、労働契約の変更の要件としては、変更内容について書面を交付することまでは求められないものです(令5・10・12基発1012第2号参照)。
- 「労働契約の内容である労働条件」には、労働者および使用者の合意により労働契約の内容となっていた労働条件のほか、労契法7条本文により就業規則で定める労働条件によるものとされた労働契約の内容である労働条件、法10条本文により就業規則の変更により変更された労働契約の内容である労働条件および法12条により就業規則で定める基準によることとされた労働条件が含まれるものであり、労働契約の内容である労働条件はすべて含まれるものです。
3. 就業規則による労働契約の内容の変更(労契法9条)
労契法9条では、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない」としています。
就業規則によって労働条件を統一的に設定し、労働条件の変更も就業規則の変更によることが広く行われている実情においては、就業規則の変更により自由に労働条件を変更することができるとの使用者の誤解を生じることがあります。
このため、法9条において、法8条の「合意の原則」を就業規則の変更による労働条件の変更の場面に当てはめ、使用者は就業規則の変更によって一方的に労働契約の内容である労働条件を労働者の不利益に変更することはできないことを確認的に規定しています。
なお、法9条但し書きで例外を示しています。「次条」(法10条)では、「就業規則の変更」という方法によって「労働条件を変更する場合」において、使用者が「変更後の就業規則を労働者に周知させ」たことおよび「就業規則の変更が(中略)合理的なものである」ことという要件を満たした場合に、法8条の「合意の原則」の例外として、「労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによる」という法的効果が生じることを規定しています。