身近な労働法の解説 ―事務所衛生基準~温度~―

2025年05月28日
身近な労働法の解説 ―事務所衛生基準~温度~―

事務所衛生基準規則では、事務所その他の作業場における労働者の清潔保持等のために事業者が講ずべき措置等について定めています。
その中で、「事務室の環境管理」に関して、4条および5条で事務室の温度について定めています。

目次

1. 事務所の温度

4条1項では、「事業者は、室の気温が十度以下の場合は、暖房する等適当な温度調節の措置を講じなければならない」としています。
2項では、「事業者は、室を冷房する場合は、当該室の気温を外気温より著しく低くしてはならない」とし、但し書きで、電子計算機等を設置する室における例外を定めています。
5条3項では、事業者の努力義務として、空気調和設備を設けている場合の室の気温と湿度について定めています。

2. 条文解説

4条1項では、室温が10℃以下の場合は暖房等により温度調節することを事業者の義務として定め、2項では、冷房する場合の室温について外気温より著しく低くしないことを定めています。
4条1項に違反したことで、労働安全衛生法23条(事業者の講ずべき措置等)違反に該当した場合には、罰則が設けられています(同法119条「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」)。
特別に室温を低くする必要があるサーバルームなどについては、2項但し書きで、電子計算機等を設置する室は、その作業者に保温のための衣類等を着用させた場合は、この限りではないとしています。
5条3項では、「気温」について、エアコン等の空気調和(空調)設備を設けている場合は、労働者を常時就業させる室の気温が18℃以上28℃以下になるように努めなければならない、と定めています。なお、空調設備を設けている場合以外であっても、冷暖房器具を使用することなどにより事務所における室の気温は18℃以上28℃以下になるようにすることが望ましいこと、としています。
(令4・3・1基発0301第1号)
「湿度」については、相対湿度が40%以上70%以下になるように努めなければならない、としています。

3.その他

厚労省では、温熱条件について、「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(平4・7・1労働省告示59号)を定め、「屋内作業場においては、作業の態様、季節等に応じて温度、湿度等の温熱条件を適切な状態に保つこと。また、屋外作業場については、夏季及び冬季における外気温等の影響を緩和するための措置を講ずることが望ましいこと」としています。
労働契約法5条において、事業者には安全配慮義務が課されています。
事務所内においても熱中症防止のための温度・湿度管理に留意し、作業内容を考慮した至適温度に設定するとよいでしょう。

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