身近な労働法の解説 ―男女同一賃金―

2024年06月06日
身近な労働法の解説 ―男女同一賃金―

労基法4条では、男女同一賃金の原則について規定しています。

目次

1. 労基法4条

「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」と規定し、賃金について、単に女性であることがゆえに男性と差別的取扱いをすることを禁止しています。

憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定し(法の下の平等)、労基法4条はこれを具体化したものです。憲法14条は賃金の差別的取扱いに限りませんが、労基法4条は、「わが国における従来の国民経済の封建的構造のため、男性労働者に比較して一般に低位であった女性労働者の社会的、経済的地位の向上を賃金に関する差別待遇の廃止という面から、実現しようとするもの」(昭22・9・13発基17号、平9・9・25基発648号)であることから、労働条件のうち特に顕著な弊害の認められた賃金について、罰則をもって、その差別的取扱いを禁止しています。

2. 条文の解説

「女性であることを理由として」差別的取扱いをするとは、例えば、労働者が女性であることのみを理由として、同一職種に就業する学卒者の初任給について男女で差別をすることは、一般的に本条に違反します。なお、労働者の職務、能率、技能等によって、賃金に個人的差異があることは、本条の差別的取扱いではありません。

「賃金」とは、労基法11条の賃金をいいます。賃金の額そのものについて差別的取扱いをすることはもちろん、額の問題として賃金体系・賃金形態等について差別的取扱いをすることも含まれます。例えば、①職務、能率、技能、年齢、勤続年数等が同一である場合において、男性は月給制、女性はすべて日給制として、男性がその月の労働日数にかかわらず毎月一定であるのに対し、女性はその月の労働日数の多寡によってその月の賃金が男性の一定額と異なる場合は、差別的取扱いとされます。②男性にのみ住宅手当・家族手当を支給する取扱い、③一方の性の労働者にはその配偶者の所得が一定額を超える場合でも手当を支給するのに、もう一方の性の労働者にはその配偶者の所得が一定額以下でないと手当を支給しないという取扱いは、ともに差別的取扱いとされます。

「差別的取扱い」をするとは、「不利に取扱う場合のみならず有利に取扱う場合も含む」(昭22・9・13発基17号等)とされます。

本条違反には、労基法119条1号の罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)があります。本条違反が成立するのは、現実に差別的取扱いをした場合であって、単に就業規則において差別的取扱いをする趣旨の規定を設けただけでは、その規定が無効(労基法92条)になるにとどまり、本条違反とはなりません。

3. その他関連法令

賃金以外の労働条件についての差別的取扱いは本条違反にはなりませんが、募集、採用、配置、昇進・降格、教育訓練、一定の福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新について、性別を理由とする差別的取扱いの禁止については、男女雇用機会均等法に規定があります。

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