身近な労働法の解説 ―労働条件の明示(2)―

2023年12月25日
身近な労働法の解説 ―労働条件の明示(2)―

今回は、労基法15条(労働条件の明示)に関して、明示すべき労働条件について解説します。

1.労働条件の明示事項(労基法15条1項、労基則5条)

(1)書面で明示すべき労働条件

  1. 労働契約の期間(期間の定めの有無、定めがある場合はその期間)
  2. 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準(満了後に更新する場合があるもの)
  3. 就業の場所・従事する業務の内容
  4. 労働時間に関する事項(始業・終業時刻、時間外労働の有無、休憩、休日、休暇など)
  5. 賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切・支払の時期に関する事項
  6. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

(2)その他明示すべき労働条件

  1. 昇給に関する事項
  2. 定めた場合に明示すべき事項(退職手当、臨時に支払われる賃金、賞与、労働者に負担させる食費・作業用品、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁、休職などに関する事項)

※職安法5条の3、職安則4条の2:「試用期間」、「加入保険の適用」、「募集者の氏名または名称」、「派遣労働者として雇用する場合はその旨」、「受動喫煙防止措置の状況」を募集や求人申込の際に、書面で明示する必要があります。
※パート・有期雇用労働法6条、則2条:「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「相談窓口」を文書の交付などにより、パート・有期雇用労働者に明示する必要があります。

2.明示の内容

上記1(1)②は、有期契約労働者が「契約期間満了後の自らの雇用継続の可能性について一定程度予見することが可能となるものであることを要」します(平24・10・26 基発1026第2号)。

同④は、「勤務の種類ごとの始業および終業の時刻、休日等に関する考え方を示した上、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで足り」ます(平11・1・29 基発45号)。

同⑤は、「賃金に関する事項が当該労働者について確定し得るものであればよく、例えば、労働者の採用時に交付される辞令等であって、就業規則等に規定されている賃金等級が表示されたものでも差し支えない」としています(昭51・9・28 基発690号)。

3.令和6年(2024年)4月の改正点

労働者の募集時等や、労働契約の締結・更新のタイミングにおける労働条件明示事項が追加されます。

(1)全ての労働者に対する明示事項

上記1(1)③就業の場所・業務の内容については、「雇い入れ直後」に加え、これらの「変更の範囲(将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲)」を明示します。

(2)有期契約労働者に対する明示事項

  • 更新上限の明示(更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示)
  • 無期転換申込機会の明示(無期転換権が発生する更新のタイミングごとに明示)
  • 無期転換後の労働条件の明示(同上)
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