労基法では、労働契約の締結に際して、労働者に対して労働条件の明示を義務づけています。
今回は、明示の時期・方法について解説します。
1.労基法の定め
労基法15条1項前段では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」としていますまた、同項後段では、明示の方法について定めています。
2.明示する時期
労働契約の締結の際に明示する必要があります。「労働契約の締結」には、有期労働契約の期間満了後の契約更新や定年後の再雇用も含まれます。採用内定により労働契約を締結していると認められる場合は、採用内定に際して明示しなければなりません。
なお、職安法5条の3では、ハローワーク等への求人の申込みや自社HPでの募集、求人広告の掲載を行う際に、求人票や募集要項において労働条件を明示しなければならないとしています。
3.明示の方法
書面で明示しなければならない労働条件は、労働者に書面を交付することにより明示します。ただし、労働者が希望した場合は、FAX、Eメール、SNSメッセージ機能等により明示することができますが、出力して書面を作成できるものに限られます(労基則5条4項)。
書面の交付により明示すべき事項については、「書面の様式は自由」で、「当該労働者に適用する部分を明確にして就業規則を労働契約の締結の際に交付することとしても差し支えない」とされています(平11・1・29基発45号)。
労基法15条1項で定める明示事項で、書面の交付が義務付けられていない労働条件についても、書面や口頭等で明示する必要があります。
その他の法令により、書面の交付・文書の交付等で明示が義務づけられている事項もありますので、留意します(職安法5条の3第4項、パート・有期雇用労働法6条1項等)。
4.明示された条件が事実と相違する場合
労基法15条2項では、労働者保護を目的として、「明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる」としています。
この解除権は、同条1項の明示すべき労働条件について事実と相違する場合に限られ、また、当該労働者自身に関する労働条件に限られると解釈されています。
5.罰則
労基法15条1項の明示をしない場合には、罰則があります(労基法120条)。
明示すべき労働条件については、次回に解説します。